生保の24年度の円建て一時払い保険の販売額は2兆9900億円で、外貨建て保険の2兆9600億円を上回った。円建て保険の販売額が外貨建て保険を上回るのは、14年度以来10年ぶりだ。
金利上昇を受け各社は円建て保険の予定利率の引き上げに動き、再び円建て保険の販売額が増加した。
記事
2025年7月10日付日経記事「円建て保険の販売拡大 10年ぶり外貨建て超え 銀行経由、金利上昇追い風」によれば、
「銀行など金融機関経由の保険販売で、円建て保険の販売が拡大している。
低金利局面では相対的に利回りの高い外貨建て保険の販売が好調だったが、金利ある世界の到来で円建て保険の魅力度が高まっている。
利上げ継続をにらみ、生保各社は市場金利に応じて月に2回利率を見直す商品を投入するなど、商品の多様化を図っている。
生保各社は自前の営業職員チャネル以外に、保険ショップなどの代理店や金融機関の窓口で保険を販売している。金融機関窓販の販売額は年間6兆円規模に上り、単純計算で保険料全体の2割弱を占める。金融機関窓販を専門とする子会社で商品を開発する生保もある。
業界の推計値によると、金融機関窓販の商品を手掛ける生保の24年度の円建て一時払い保険の販売額は2兆9900億円で、外貨建て保険の2兆9600億円を上回った。円建て保険の販売額が外貨建て保険を上回るのは、14年度以来10年ぶりだ。
データのある2002年度以降、14年度までは円建て保険の販売額が外貨建てを上回っていた。国内金利の低下に伴い13年ごろから円建て商品の予定利率は徐々に低下し、一部生保は販売を手控えた。相対的に高い利回りを提示できる外貨建て保険の魅力度が高まり、15年度に外貨建ての販売額が円建てを上回った。
16年の日銀によるマイナス金利導入以降は国内金利の低下に拍車がかかり、一部生保は円建て保険の新規引き受けを停止した。11年度に約5兆円だった円建て商品の販売額は18年度に6000億円まで減少した。一方、外貨建て保険の販売額は18年度に全体の9割にあたる4兆円強にまで拡大した。
日銀がマイナス金利を解除した24年3月以降、国内金利は上昇している。金利上昇を受け各社は円建て保険の予定利率の引き上げに動き、再び円建て保険の販売額が増加した格好だ。大手行の担当者は「外貨建て商品でないと応えられなかったニーズに円建てでも対応できる可能性がでてくる」と話す。
外貨建て保険の解約率の高さが問題視されたことも大きい。金融庁は24年4月、外貨建て一時払い保険の約6割が加入後4年以内の短期間で解約されているとの調査結果を公表した。
金融機関が保険会社から受け取る手数料は初年度に多く受け取れる「L字型」となっており、短期での乗り換えを誘発しているとの指摘があった。一部の金融機関では外貨建て保険の販売を取りやめる動きも広がり、販売の逆風となった。
国内金利には先高観があり、各社は早くも利回りの引き上げや商品の多様化を急ぐ。住友生命保険は7月から、金融機関窓販向けの一時払い終身保険の予定利率を1.5%から2.0%に引き上げた。日本生命保険も24年後半から徐々に予定利率を引き上げ、足元では1.65%の利率を提示している。
明治安田生命保険や第一生命ホールディングス(HD)傘下の第一フロンティア生命保険は、市場金利に応じて月に2回利率を見直す商品を提供。解約時の返戻金も金利に応じて変動する仕組みだ。明治安田生命は一部契約期間を除き、2%を超える予定利率を提示している。第一フロンティア生命も一部契約期間を除き、運用原資にかかる利率を2%超とする。
介護保険や年金保険でも利回りを引き上げる動きが出ている。太陽生命保険は一時払いの終身介護年金の予定利率を引き上げており、足元では2%近い利率を提示している。
金融機関窓販チャネルは他社の商品との利回り競争に陥りやすい。一時払い保険は一般に利益への貢献度が薄いとされる。各社で販売額を追うことになれば自らの首を絞めることになりかねず、利率の引き上げには慎重論もある。現在の金利環境では生み出せる利差益(予定利率と実際の運用利回りの差)には限界があるためだ。
一部商品を除くと、予定利率が標準責任準備金を積む際の利回りである標準利率を上回るほど積み立て負担は重くなる。販売量に応じて一時的に基礎利益が押し下げられることになるため、生保各社にとって予定利率の適正水準の見極めもカギとなる。」
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