スイス利下げ、ゼロ金利に。2025年6月19日
スイス国立銀行(中央銀行)は6月19日、政策金利を0.25%引き下げてゼロ%にすると発表した。
スイスには米国市場から逃避したマネーが流入している。通貨高で物価が下がり始めており、一段の利下げに追い込まれた。
記事
2025年6月20日付日経記事「スイス利下げ、ゼロ金利に 欧米主要中銀で3年ぶり
通貨高進みデフレ圧力」によれば、
「スイス国立銀行(中央銀行)は19日、政策金利を0.25%引き下げてゼロ%にすると発表した。水準としてはマイナス金利政策を解除した2022年9月以来の低さになる。欧米の主要中銀でゼロ金利になるのは約3年ぶりだ。
スイスはトランプ政権で揺れる米国市場から逃避したマネーが流入している。
通貨高で物価が下がり始めており、一段の利下げに追い込まれた。ウクライナ危機後のインフレ対応の金融政策は一変し、米国で物価高再燃のリスクがくすぶるなかでもデフレ懸念への配慮が必要な局面を迎えた。
シュレーゲル総裁は19日の記者会見で「きょうの利下げによりインフレ圧力の低下に対処する」と強調した。「必要に応じて金融政策を調整していく」とも語り、政策金利をゼロ%未満に下げるマイナス金利の導入に含みを持たせた。
政策金利の水準としては日銀の0.5%を下回り、主要中銀で最も低くなる。欧米の主要中銀でゼロ金利が復活するのは米連邦準備理事会(FRB)が22年3月に、欧州中央銀行(ECB)が22年9月に終えて以来になる。新たな政策金利は20日から適用する予定だ。
0.25%の利下げは事前の市場予想通りで、一部でマイナス金利政策の導入観測も出ていた。スイス国立銀行は3カ月ごとに金融政策を判断しており、利下げとしては24年3月に開始してから6会合連続になる。
スイスは5月の消費者物価指数が前年同月比0.1%下落した。物価の伸び率がマイナスに転じたのは21年3月以来だ。ロシアがウクライナに侵略した22年には一時3%を超えるインフレに直面していた。スイス国立銀行は22年9月にマイナス金利政策を打ち切っている。
問題はデフレ懸念の強まりだ。スイス国立銀行は物価の安定目標を2%未満の上昇率と定めており、物価の下落が続けば市場からの緩和圧力が高まることになる。5月の消費者物価はサービスが1.1%上昇した半面、通貨高が響く輸入品は2.4%下落するなど落ち込みがきつい。
スイス国立銀行は新たな物価見通しも公表した。物価上昇率は25年が0.2%、26年が0.5%とそれぞれ3月時点から0.2ポイント、0.3ポイント下方修正した。27年にかけて物価上昇率は1%を下回り続ける想定だ。
新たに公表した金融政策報告書では「欧州は米国とは対照的にインフレ圧力が弱まっていく」と指摘した。スイス経済の先行きは「依然として不透明だ」と警戒を示した。
永世中立国であるスイスはドル資産の目減りを警戒したマネーの待機場所になりつつある。外国為替市場では年初に1ドル=0.91スイスフラン程度だったのが、足元は0.81スイスフラン台にまで上昇した。ECBも同様に想定外のユーロ高に直面しており、市場で利下げ観測を呼ぶ一因になってきた。
医薬品や高級腕時計に代表されるスイスは輸出型経済で、資金流入とは裏腹に急激な通貨高は実体経済の逆風にもなる。スイス国債にも投資家の資金が流入し、政策金利の動きを反映しやすい2年債の利回りは今春からマイナス圏で推移してきた。
トランプ米大統領が掲げる「相互関税」も波乱要因だ。スイスからの輸入品に課す税率は原則31%と欧州連合(EU)の20%より高い設定で、トランプ氏の発言も二転三転している。
スイスは世界の主要中銀に先駆けて利下げを決めてきた経緯がある。24年3月に政策金利を引き下げた際は、ロシアがウクライナに侵略してから米欧の主要先進国で初めて踏み切った。
当時の総裁だったジョルダン氏は「通貨フランの上昇を考慮した」と発言しており、将来的な通貨高阻止への警戒をにじませている。通貨高に伴うデフレ圧力が一段と強まれば、スイスフラン安に誘導するためにも金利を押し下げる利下げが有力な選択肢になる。
通貨高の阻止にも火種はくすぶる。米財務省は5日公表した報告書で、為替操作をしていないか注視する「監視リスト」にスイスを加えた。市場ではマイナス金利再導入の観測がくすぶるものの、マイナス圏に「水没」することによる銀行収益の圧迫など金融システムの安定にも目配りが必要になる。」
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