米超長期債から資金流出、2年債と利回り差拡大
トランプ米大統領の政策による財政悪化への懸念から、長い年限の債券売りが広がっている。
30年債と2年債の利回り差は一時、約3年ぶりの大きさに広がった。
記事
2025年1月25日付日経記事「米超長期債、財政不安映す トランプ減税の影響懸念 資金流出、2年債と利回り差拡大」によれば、以下、抜粋
「米国債市場で、償還までの期間が長い債券への利回り上昇(価格は下落)圧力が強まっている。30年債と2年債の利回り差は一時、約3年ぶりの大きさに広がった。トランプ米大統領の政策による財政悪化への懸念から、長い年限の債券売りが広がっている。
1月上旬、米30年債利回りから2年債利回りを引いた利回り差は0.6%台半ばと、2022年3月以来2年10カ月ぶりの大きさとなった。10年債と2年債の利回り差も0.4%台前半と、22年5月以来2年8カ月ぶりの水準に拡大した。
金融政策の影響を受けやすい短期金利に対し、長期金利は長期的な実質経済成長率や期待インフレ率、政府の財政状況に影響されやすいとされる。年限が長いほど、長期の見通しを映しやすい。
利回り差拡大の背景にはトランプ氏の大型減税案への懸念がある。25年末で失効する所得税減税の延長に加え、上下両院ともに共和党が多数派となったことで法人税減税などが実現し、財政の一段の悪化を招くとの見方がある。
超党派組織の「責任ある連邦予算委員会(CRFB)」によると、トランプ氏の減税案に伴う財政赤字の拡大幅は10年間で8兆ドル。大和総研の矢作大祐主任研究員は、国内総生産(GDP)対比で28%に達すると試算する。第1次政権時の減税案(同7%程度)と比べても影響は大きい。
野村証券によると、米国債の上場投資信託(ETF)では24年11月以降に「10年超」の年限で資金流出が急速に進んだ。「3年以下」や「3年超10年以下」の年限に比べても流出幅の大きさが際立つ。
小清水直和シニア金利ストラテジストは「トランプ氏の当選を受けて長い年限の米債の買い持ち高を解消する動きが、米国の生保や年金基金、個人の間で広がった」と指摘する。
債券は年限が長いほど、価格の変動リスクが大きい。JPモルガン証券の山脇貴史債券調査部長は、長期~超長期の年限で金利上昇が目立った理由を「25年初は普段と異なり米雇用統計の前に複数の米国債入札が続いたため、投資家は特に超長期債の購入に慎重にならざるをえなかった」とみる。
みずほ証券の上家秀裕シニア債券ストラテジストは「市場では25年後半に米国債が増発されるとの見方が強まっている」と語る。
市場には、年央に米政府が債務の法定上限に到達するとの見方もある。上限の引き上げや一時停止の法案を可決できなければ、米国債の債務不履行(デフォルト)となる。米国債の格下げにつながれば、米債売りが加速しかねない。
米国では住宅ローンの借入期間を30年に設定するケースが多い。超長期債利回りの上昇が続けば、住宅購入や事業運営の際の資金調達コストが膨らみ実体経済の減速にも波及しかねない。米国債市場のイールドカーブ(利回り曲線)が今後もスティープ化(急勾配化)し続けるのか、注視していく必要がありそうだ。」
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