市場、「8月円高」に警戒感。2024年7月
2024年7月27日付日経新聞記事「市場「8月円高」に警戒感 通貨オプションに円買い需要 日米金利差の縮小意識」によれば、
「外国為替市場で経験則とされる「8月の円高」に身構える動きが出てきた。
通貨を売買する権利を取引する通貨オプション市場で、1カ月後の円高・ドル安を警戒する取引が増えている。
7月末には日米の金融政策決定会合が控えるが、円相場にとっての波乱の芽は8月に待ち受けている可能性がある。
「8月は円高・ドル安に振れやすい」。外国為替市場では長年、こうした通説がささやかれてきた。
8月は米国債の大量償還の時期で、利払いで受け取ったドルを円に替える円買い・ドル売りのフローが生まれやすいとされる。
お盆休みを前に国内の輸出企業が円買い・ドル売りの為替予約を済ませることが円高につながる、との指摘もよく聞かれる。
半面、ここ数年は貿易赤字など「構造的な円売り」フローが強まり「8月円高」が起きにくくなっているとの声もあった。
7月22日に対ドルで1ドル=157円台を付けていた円相場は25日に一時1ドル=151円90銭台まで上昇した。対ドルのみならず、ユーロや英ポンドなど幅広い通貨に対しても上昇が目立つ。
日米双方で金融政策の転換が近いとの見方が広がる中、年初から進んできた低金利の円を調達して高金利のドルで運用する「円キャリー取引」に巻き戻しの動きが出ているためだ。
日本側では、政府・与党幹部が相次いで日銀への金融正常化を求めている。
米国側では6~7月にかけて景気の鈍化を示す経済指標が目立ち、米連邦準備理事会(FRB)高官らによる利下げ時期が近づきつつあるという趣旨の発信が増加。
25日発表の4~6月期の米実質国内総生産(GDP)は市場予想を上回ったものの、米金利先物の値動きから金融政策の先行きを予想するフェドウオッチで市場が見込む9月利下げ確率は100%を維持している。
日銀が利上げに、FRBが利下げに向かう中で日米金利差の縮小が意識されやすい。
円キャリー取引の妙味が減るとして一方的な円安・ドル高の進行に落ち着きがみられる。ある邦銀ディーラーは「7月上旬に付けた1ドル=161円90銭台が今年の最安値になる可能性がある」と話す。
スポット(直物)の為替レートは円全面安からの巻き戻しが進むが、将来の為替相場の予想が反映される通貨オプション市場にも変化の兆しがみられる。具体的には、円を対ドルで「売る権利(プット)」の需要から「買う権利(コール)」を差し引いたリスクリバーサルの動きだ。リスクリバーサルのマイナスが拡大すれば、円高警戒感が強まっていることを示す。
期間1週間のリスクリバーサルをみると、25日時点で1週間前(17日)とほぼ同じ値を付ける。ただ、期間1カ月の場合は政府・日銀による為替介入への警戒感が高まっていた4月下旬以来、約3カ月ぶりの低水準に沈んでいる。その分だけ円高・ドル安進行への警戒感が強まっていることになる。
1カ月後の8月22~24日に予定されているのが、米カンザスシティー連銀が主催する国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」だ。
FRBのパウエル議長がこの場で9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)における利下げを宣言するのではないか、との見方がある。足元で1カ月後の円高警戒感が一段と強まっているのは、FRBが1回で終わらない利下げ局面に入っていくのではないかとの市場の見方を映している。
市場では激しい円の買い戻しが続いた分、巻き戻しはいったん小休止になるとの声も出てきた。岡三証券の武部力也シニアストラテジストは「1ドル=150円を上回ってすぐに円高・ドル安が進んでいくとは見込みにくい」とみる。
米大統領選など不透明要因も多く、円相場が上昇と下落のどちらに向かうか、明確な方向性が見にくくなったとの指摘もある。
りそなホールディングスの井口慶一シニアストラテジストは「7月末の日銀会合だけでなく、その先も円相場のボラティリティー(変動率)は高い状況が続き、乱高下する可能性はある」と話す。夏季休暇で市場参加者が取引を手控え、流動性が落ちやすい8月は波乱含みの展開となるかもしれない。」
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