ドル建定期預金、満期時の為替差益に対する課税
ドル建定期預金の利子については20%の源泉分離課税が適用されますが、元金については、ドルのままだと為替差益に対する課税は発生しません。
ドルを円に換えた時点で、為替差益に対する課税(雑所得)が行われます。
例えば、昨年7月、1ドル140円の時に投資した、利率5%のドル建定期預金1万ドルが、今月(1ドル160円)、満期を迎えたとします。
利子は、元金10000ドル×利率5%=500ドルですが、税金100ドルが源泉徴収(税率20%)され、400ドルが口座に入金されます。
元金ですが、投資時の1ドル140円が、満期時には160円となっており、元金1万ドルに対し20万円の為替差益が生じています。
ところが、外貨定期預金として継続または外貨普通預金に入金する場合には、その為替差益に対しては課税が行われません。
もっとも、満期時に、為替差益に対する課税が行われれば、その税金が受取利子を上回りかねませんので、外貨建定期預金に投資する人などいなくなります。
そのような事情があってかどうかはわかりませんが、外貨定期預金については、税務上の特別規定が設けられています。
国税庁のホームページによれば、
外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い|国税庁
「外貨建預貯金の預入及び払出に係る為替差損益の取扱い
【照会要旨】
A銀行に米ドル建で預け入れていた定期預金(以下「本件預金」といいます。)1万ドルが満期となったため、満期日に全額を払い出し、同日、本件預金の元本部分1万ドルをB銀行に預け入れました。この場合、B銀行に預け入れた時点で本件預金の元本部分に係る為替差益を所得として認識する必要はありますか。
• 預入時のレート・・・1ドル=100円(円からドルへの交換と本件預金の預入は同日)
• 払出時のレート・・・1ドル=110円
• 為替差益・・・(110円-100円)×1万ドル=10万円
【回答要旨】
為替差益を認識する必要はありません。
外貨建取引とは、外国通貨で支払が行われる資産の販売及び購入、役務の提供、金銭の貸付け及び借入れその他の取引をいい、居住者が外貨建取引を行った場合には、その外貨建取引の金額の円換算額はその外貨建取引を行った時における外国為替の売買相場により換算した金額として、その者の各年分の各種所得の金額を計算するものとされています(所得税法第57条の3第1項)。
ただし、外国通貨で表示された預貯金を受け入れる金融機関を相手方とする当該預貯金に関する契約に基づき預入が行われる当該預貯金の元本に係る金銭により引き続き同一の金融機関に同一の外国通貨で行われる預貯金の預入は、上記の外貨建取引には該当しないものとされています(所得税法施行令第167条の6第2項)。
したがって、外貨建預貯金として預け入れていた元本部分の金銭につき、 同一の金融機関に、 同一の外国通貨で、 継続して預け入れる場合の預貯金の預入については、外貨建取引に該当しないこととされていますので、その元本部分に係る為替差損益が認識されることはありません。
この所得税法施行令第167条の6第2項《先物外国為替契約により発生時の外国通貨の円換算を確定させた外資建資産・負債の換算等》の規定は、外貨建預貯金の預入及び払出が行われたとしても、その元本部分に関しては、同一の外国通貨で預入及び払出が行われる限り、その金額に増減はなく、実質的には外国通貨を保有し続けている場合と変わりはなく、このような外貨の保有状態に実質的な変化がない外貨建預貯金の預入及び払出については、その都度これらを外貨建取引とすることにより為替差損益が認識されることは実情に即さないものであると考えられることから、所得税法第57条の3第1項《外資建取引の換算》でいう外貨建取引からは除かれることを明らかにした例示規定であると解されます。
このようなことを踏まえると、本件預金の預入及び払出は、他の金融機関へ預け入れる場合であるとしても、同一の外国通貨で行われる限り、その預入・払出は所得税法施行令第167条の6第2項でいう外国通貨で行われる預貯金の預入に類するものと解され、所得税法第57条の3第1項の外貨建取引に該当しない、すなわち、為替差損益を認識しないとすることが相当と考えられます。」
(生活レベルを下げられない後期高齢者のコメント)
外貨建定期預金の場合は、別の銀行に乗り換えた時にも、為替差益は発生しないようです。
ところが、外貨建債券(国債・社債)の満期の場合は、円に換えてもいないのに為替差益に対して課税されます。
外債償還時の課税方法に疑問あり - 後期高齢者のポートフォリオの今
外貨建債券を取り扱う証券会社と定期預金を取り扱う銀行との政治力の差が原因でしょうか。
外貨建定期預金の詳細については、下記を参照のこと
外貨預金の特徴を知る | C.投資する | 一般社団法人 全国銀行協会