日銀、利上げで長期金利は上がるのか

2025年12月19日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%から0.75%に引き上げると決めた後、新発10年物国債利回りは急上昇(債券価格は急落)した。
日銀は2026年6月の決定会合で利上げの是非とともに、国債買い入れの減額計画の中間評価についても話し合うが、減額の勢いを緩めたり停止したりすれば、そのぶん日銀の国債購入が相場を一定程度支えることになる。
長期金利の上昇が注目されるなかで、利上げと国債購入見直しの「合わせ技」の議論は避けられない。
記事
2026年5月29日付日経記事「利上げで長期金利は上がるのか 植田総裁が向き合う難問 国債市場のクジラ、日銀の選択㊦」によれば、
「利上げで長期金利は上がるか」。2026年に入って日銀幹部がこんな議論を活発に交わしている。植田和男総裁も海外投資家に直接、意見を求めることがあったという。
植田氏らの脳裏にあるのが、25年12月の国債相場の動きだ。同月19日の金融政策決定会合で政策金利を0.5%から0.75%に引き上げると決めた後、長期金利の指標になる新発10年物国債利回りは急上昇(債券価格は急落)した。同年11月末は1.8%程度で推移していたが、12月会合後は2.0%台が定着した。
前回利上げ時、長期金利は上昇
当時、26年度予算の編成過程で高市早苗政権の積極財政への懸念から、債券市場では長期金利が上昇傾向にあった。首相は市場の安定を期待して利上げの容認姿勢に傾いたとされるが、長期金利の上昇は止まらず、首相に「利上げ=長期金利上昇」の印象が刷り込まれたとの見方が政府内にある。
一般的に長期金利は①将来の短期金利予想②財政悪化やインフレ加速など債券の保有リスクに応じて投資家が要求するタームプレミアム(上乗せ金利)――で決まる。短期金利を引き上げる利上げは、タームプレミアムが変わらなければ長期金利の上昇に直結するという理屈は確かだ。

もっとも今、日銀内で多く聞かれるのは利上げが将来のインフレ不安を鎮め、タームプレミアムの拡大を抑えるという解説だ。
「原油価格上昇によるグローバルなインフレリスクの高まりや財政政策などに対する市場参加者の見方が国債金利に反映されている」。日銀の小枝淳子審議委員は21日の講演で足元の金利上昇の背景をこう読み解いた。「短期金利が上昇しても長期金利は必ずしも上昇するとは限らない」とも言及した。
長期金利が一時2.8%台と29年半ぶりの高さを記録するなか、利上げがさらなる金利上昇を招くという見方をけん制する発言だった。あるメガバンク幹部も「足元の長期金利上昇の要因は将来の政策金利の上昇よりもインフレ懸念が大きいのは明白だ」と強調する。
マーケットコンシェルジュ代表の上野泰也氏は「日銀が1回利上げしたくらいでは、市場の財政悪化懸念や米金利上昇の見通しを覆せず、日本の長期金利の上昇圧力は弱まらないだろう」と分析する。
利上げと国債購入見直し「合わせ技」も
日銀の植田総裁は22日に首相と会談し、金融政策をめぐり「様々な側面について有益な意見交換ができた」と記者団に話した。利上げなどの「具体的な話は特に出さなかった」とも語ったが、日銀は政権と対話を重ねている。「長期金利を上げたくないというゴールは日銀と官邸で共有している」。ある政府関係者はこう指摘する。
日銀は6月の決定会合で利上げの是非とともに、国債買い入れの減額計画の中間評価についても話し合う。金融政策の主軸は短期金利の操作に移り、国債保有の縮小といったバランスシート政策は後景に退いたというのが日銀の立場だが、長期金利の上昇が注目されるなかで両者の議論は切り離せなくなっている。
国債買い入れの減額は現行ペースで続ければ、27年1〜3月に月2.1兆円まで縮小し、その後は月1兆円台まで細ることになる。減額の勢いを緩めたり停止したりすれば、そのぶん日銀の国債購入が相場を一定程度支えることになる。
ある日銀OBは「日銀が政権に6月利上げの意向を伝える際は、国債買い入れの減額縮小が(政権の容認を得るうえで)交渉材料になり得る」とみる。利上げで長期金利が上昇するという首相の不安が拭えないのであれば、国債買い入れの見直しを金利抑制の手段としてセットで提示すればよいという見立てだ。
日銀内でもこうしたシナリオに肯定的な声がある。他方で、ある日銀幹部は「今の局面で金利抑制に日銀の国債購入を用いれば財政ファイナンスの批判は避けられない」との見方を示す。政府内では日銀の国債保有圧縮ペースが鈍れば、余剰マネーの回収も遅れて円安加速を招くとの声も上がり、「合わせ技」の成否は読み切れない。
利上げを見据えつつ長期金利の大幅上昇も避けたい日銀は、狭き道を通ろうとしている。
(北島空、上田志晃、竹内宏介が担当しました)」
(関連ブログ)
「国債市場のクジラ」日銀の購入減が難所に - DIE WITH ZEROの資産運用日記